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こだわり人[2014.12.16]

暮らしの中の、緑へのこだわり

 住まいに緑。街に緑、地球に緑。もはや緑なくして時代は語れない。この分野の第一人者、進土五十八氏(東京農業大学 元学長)は著書『緑のまちづくりの学』(学芸出版社)の中で、"緑=Greenの語源はアーリアン語のGhra(生長するの意)。朝露にぬれてピンと咲いたアサガオが昼下がりの陽射しでしおれる姿を思い出してほしい、わずかな環境の変化に敏感に対応する点に生命の弱さや微妙さ、生きている緑の実感がある。生命体としての人間は同じ生物として緑に心から共感がもてるのである。都市や人間社会が無機的で生き生きとした生命感に乏しくなった現代、人々は緑を叫ぶ形で『生物としての自己』を再確認したい。有機的な環境や結びつきを本能的に求めているのである"と記されている。
この本能的な緑に対して圧倒的な存在感を示しておられる企業が気になって仕方がなかった。来年1月に創業50周年を迎えられる東邦レオという株式会社である。ということで今回は、緑を基軸に自然とのかかわりの中から新しいライフスタイルを創造しようという東邦レオのこだわりに着目させていただいた。

 

 

こだわり人 ファイル034

暮らしの中の、緑へのこだわり

屋上緑化のパイオニア企業 《東邦レオ株式会社》

●人と地球にやさしい緑への熱い想い。

 緑、自然環境、エコなどに関する図書や展示会などで幾度となく東邦レオという名を目にしていた。機会があれば緑への想いなどをお伺いしたいと思っていたところにテレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』やTBSの『いっぷく』、また一般紙が入れ代わり立ち代り東邦レオの屋上緑化や壁面緑化やベランダ装飾を取り上げているのである。これはもうお伺いしなければだ。本社は大阪だが、幸い山手線の大塚駅前に東京支社があるというので、こちらを訪問させていただいた。


 すると、広報室の熊原 淳室長が迎えてくださり、「緑化事業はいまから30年以上前から本格的に乗り出しました」と言ってその経緯をお話しいただいたので、現在に至る歩みを簡単に紹介しておこう。

 1965年(昭和40)に断熱・吸音などの機能を有した建材の販売会社として創業された東邦レオが緑化事業に目を向けられたのは1970年後半からである。当時の都市公園などの一人当たりの面積は現在の3分の1の状況で、さまざまな場所で公園開発が進んでいた。その頃、東邦レオが販売していた建材(商品名:ホワイトローム)には土の排水性を高める土壌改良の効果があることがわかり、建築事業の社員であった木田幸男氏(現在:東邦レオ専務取締役)が社内ベンチャーを立ち上げ、緑化事業に参入されたのだ。
 当時、公園と共に下水処理場が数多く建設されており、屋上には2~4へクタールの屋上公園が作られていた。屋根に降った雨をスムーズに建物外部に「排水」すると共に、1メートル以上となる盛土の「軽量化」が求められ、この屋上分野でもホワイトロームが大量に利用され、事業が急拡大する原動力になったそうである。
 その後、さまざまな緑化の現場に対応すべく技術開発が進み、当時数種類だった商品ラインナップが現在では100種類を越えるまでになり、東邦レオの緑化事業への期待が一段と高まっていったのである。まさに時代が東邦レオを呼んだのだ。いや違う、東邦レオに時代の流れを読む先見性があったのだ。
 そこに持ってきて2001年(平成13)、東京都の『東京における自然の保護と回復に関する条例』が追い討ちだ。一定基準以上の敷地内における新築や増改築の建物に対して、屋上緑化が義務づけられたのである。
 現在、東京都の条例をもとに他の自治体(大阪府、京都府、兵庫県、名古屋市など)でも屋上緑化を義務化すると共に、融資や助成、税減免などによって屋上緑化事業を重要な行政施策にされているが、そこには東邦レオが果たした役割は筆致に耐え難いということだ。人にやさしい緑、地球のやさしい緑はいまや時代の代名詞になっている。

●豊かな経験から生まれた納得のこだわり技術。

 私事で恐縮だが私は中学校の時によく思っていたことがある。校舎の屋上がコンクリートむき出しで、ボール遊びなどは絶対ダメ、許されるのは縄跳びぐらい。隅の方に申しわけそうにミカン箱を並べトマトやヒマワリを植えているだけなので、こんなスペースがあるのだから植木や花をもっと植えれば鳥や蝶々がやってきて、楽しい屋上楽園になるのにと。
 その後、そんな思いは頭の中から消えていたが、東邦レオの屋上緑化が再び子供の頃をよみがえらせてくれたのだ。マスコミが東邦レオに着目するのがわかるような気がする。歴史があるんだ。そこで私は「想像するに、屋上緑化のパイオニア企業として、その裏には大変なご苦労があったのでしょうね」と熊原室長にお聞きしたのである。すると、熊原室長は「私どもの屋上緑化事業を集大成した本があります」と一冊の分厚い本を示されたのである。

 なんとその本は、図書館で読んだ『屋上緑化完全ガイド』(筑地書館)の文中に出ていた 『新、緑の仕事Ⅱ』ではないか。「そうです。これは私どもの緑化事業のバイブルとも言われる一冊です。緑化事業を先頭になって引っ張ってきた木田幸男専務取締役(理学博士)が時代を越えて語り続けていきたいと、一つの形にしました。ここに私どもの緑化事業への思いや技術、ノウハウ、事例、緑化資材などが集約されていますので是非、目を通してください」だ。
 気になっていた本である。私のテンションは33たちまちのうちに上がり、ページをめくりながら屋上緑化によってもたらされる効果を紹介いただいたのである。

「直接的な効果としては建築物の夏季の断熱・冬季の保温、騒音の低減、うるおいややすらぎ感の向上、建築物の耐久性の向上、畑やコミュニティー施設としての活用など、多彩です。また、ヒートアイランド現象などの緩和、街の省エネルギー化、空気の浄化、雨水流出の遅延、自然環境の創出、景観の整備といった社会的な効果もありますので、資源循環型社会をめざすこの国の救世主だと思っています」
 なるほど、すごい。私が子供の頃に思ったことよりもはるかに大きな形で屋上緑化事業が展開されていることに感激だ。でも、そこには具体的な技術の裏づけがないとそのような多彩な効果も期待できないだろう。すると熊原室長は私の想いを見透かしたように技術的なこだわりを上げられたのである。
 「屋上緑化に必要な技術は多様です。計画から着工を経て完成へ。また完成後の管理、メンテナンスなどロングレンジな事業です。樹木などの日々の成長と共に常に向かい合っていかなければなりません。また、技能においても造園家、建築家、空間デザイナー、植物学者、都市計画プランナーなどさまざまな分野の専門的な知識が要求されます。幸い私どもはこの事業のパイオニアとして経験とノウハウを積みかさね、独自の技術を提供させていただいています。」

 そして、具体的な技術ということで屋上緑化に対するこだわりの技術を一覧していただいたので、そのまま掲載させていただこう。

 東京都の条例が出た頃は多くの企業が屋上緑化事業に参入されたそうである。また、自治体なども積極的に取り上げ、ある面では一種のブーム的な様相を帯びたそうである。だが、結果的にスピンアウトしていった企業は数知れないと言われる。
 「でも、私どもの思いは揺るぐことなくこの事業を推進してきました、その結果ですね、『2007年 第6回屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール 国土交通大臣賞第』、『2009年 第6回エコプロダクツ大賞 推進協議会会長賞』、『2010年 第35回発明大賞 発明功労賞』、『2011年 第10回屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール 環境大臣賞』などもいただくことができました。私どもの屋上・壁面緑化技術が活用されている事例を写真でご紹介しますので、画像体験してください」

●都会暮らしに潤いを! 室内緑化事業への新たなチャレンジ。

 これらの写真を見ていると、まさに絵に描いた餅ではないということが見てとれる。六本木ヒルズなどは何度も行っているので、"そうか、あれは東邦レオさんの技術が利用されているのか"の思いだ。すると、熊原室長は「屋上緑化で得た技術や経験を生かして壁面緑化、校庭緑化、街路樹の根上がり対策などにも積極的に取組んでいますが、この夏に室内緑化ということでグリーンインテリアブランド『PIANTA × STANZA』というショールーム&アンテナショップを茅場町に開設しました。ご覧になられますか」と言われるので、またまた私は「もちろんです」だ。そういえば、この夏、朝日新聞でその記事が出ていたので気になっていたところだ。
 あい変わらずの茅場町だ。株式の電光表示板を見ながらこの国の景気はどうなんて思いながら歩くこと5分、大小さまざまなビルが林立する中、周りの雰囲気と一味違うビルの前に立っていた。朝日新聞には"室内の壁一面、特徴生かし配置 9年で植えた緑 1万8000本"と記されていたが、ひと目でこの事業に託した東邦レオのこだわりを感じる。ファサードから自社の緑で優しい誘い空間が演出されているのである。

 心地よい。まさに都会の中の一服の清涼剤だ。そんな思いで中に入ると、この事業の総括者であり、みどり空間演出家である大山雄也ブランドマネージャーに迎えられた。大山マネージャー、もう身体全体から緑への深い愛情と慈しみが伝わってくる。

 「ここは植物を使って室内空間をプロデュースすることを目的に、"大自然と暮らす"をリアルに体感していただくことをコンセプトにして開設しました。『PIANTA × STANZA』というのはイタリア語で植物と空間を意味します。緑を主軸にその特性を最大限に活かしながら壁や天井や床を装飾することによって、人にやさしい日々息づく空間が構築できることを提案させていただいています」
 コンクリートに囲まれ、あふれるデジタル情報、時間に追われる都会生活。そんな中で心和らぐ自然と共に過ごす快適な暮らし。勢い自分もそんな空間を手にしたいと思うと、大山マネージャーは言われたのである。

「ショップやホテルなどの大規模なものから、中小のオフイス、個人の住宅などでも手軽に大自然を感じることのできる商品をラインアップしていますから、ご安心ください」だ。そして、オリジナルの壁掛けインテリア(マイギャラリー)、緑の照明インテリア(フォレスタリウム)、グリーン雑貨、さらにはグリーンウオール、グリーンオブジェなどを紹介いただくと、私の無味乾燥な部屋などももっと"グリーンマインド"を持たなければと思い知らされるではないか。

 それにしても人々の暮らしと緑を追いかけておられる東邦レオに教えられる。「自然を求めて出かけるのではない。自然を持って来るのだ」と言われる大山マネージャーの言葉がどんどんわが身に染み込んでくる。緑の保全とか維持という内向きではなく、緑を創っていくという外向きなのだ。この先、東邦レオがどのように成長、発展していかれるのか期待が期待を呼ぶ。

 そういえば東邦レオのレオは『LEO』、LIVING生活 ENVIRONMENT環境 ORGANIZER貢献者の略で、
 "人間が人間らしく生きることができる環境を創る"という経営理念を社名にされている。


文 : 坂口 利彦 氏