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こだわり人[2019.09.11]

江戸伝統の技術を、未来に紡ぐ / 株式会社杢目金屋 髙橋正樹氏(東京・渋谷区)

GマークでおなじみのGOOD DESIGN賞。デザインの可能性を支援し、私たち一人のひとりのより創造的な暮らしの構築をめざす公益財団法人日本デザイン振興会に対する期待は一段と大きくなってきている。かつて、この振興会の展示・イベントなどに関わらせていただいたことがあるが、いまでもその役割の大きさを鮮明に覚えている。なかでも、日本の伝統的な技術に着目し、その個性的な技術を後の世まで残していこうという想いを具体的な行動で示したある企業の存在は圧巻で、その遠大な歴史感、世界感に感動したことがある。

いまから4年前の2015年のことである。建築やインテリアや家電といった多彩なデザイン分野がある中で、結婚指輪という分野で初めてGOOD DESIGN賞を受賞された杢目金屋という企業である。「もくめがねや」というあまり聞きなれない社名ということもあったが、創業者で現社長の髙橋正樹氏が、江戸時代に生まれた杢目金という400年前のわが国独自の金属技術を身近に触れてその繊細な世界を現在に蘇らせると共に、ブライダルジュエリーという今日的な世界に一石を投じられたのである。杢目金へのこだわりは東京藝術大学の美術学部の在学中から始まっていて、日本人の細やかな心を集約した伝統的な技術をこのまま埋没させてはいけない、後の世に残していかなければ、ということで、杢目金技術の研究、復元に徹底的にこだわって来られたのだ。伝統的な技術を未来へ、ということだろう。ジュエリーを通じて人と人との新しい出会いを祝し、これからの人生の行く手に希望と夢を描かせるなんて、まさに技術で結ぶ“愛の伝導者”ということではないか。

それから後も、その輝かしい足跡はテレビや雑誌などで何度も目にしてきたが、髙橋さんの杢目金の加工技術に対する取り組みは終わることなく、大学卒業後に実現された秋田県の指定有形文化財である杢目技術の再現をはじめさまざまなエポックメーキングに感動していると、学校卒業後の1997年に建築、インテリア、ファションなど常に時代の最先端を行き交う発信地の街、東京都渋谷の神宮前で起業(2003年に有限会社杢目金屋設立)し、設立してから16年たった2019年現在では、従業員の数が200名を越え、東京銀座をはじめ全国の主要都市に直営店19店舗、取扱31店舗を構えるというから、その驚異的な伸長力、成長力にはただただ魅せられるばかりだ。

今回のこだわり人は杢目金にこだわり、世界中の人々の心にジャストフィットするジュエリーを提供される『株式会社杢目金屋』の代表取締役、髙橋正樹さんに着目させていただいた。

こだわり人 ファイル083

江戸伝統の技術を、未来に紡ぐ

株式会社杢目金屋 髙橋 正樹 氏(東京・渋谷区)

●こだわりの街のこだわり企業、目白押し

あいも変わらないこだわりのある街だ。都心の風にも香りがあって、思わずこちらの身体も弾み、スイングするように軽快な気分になる。すっかり姿を現した新国立競技場から早くも世界中のアスリートの人間ドラマが見えるようで、さまざまなイメージが広がっていく。笑いあり、涙あり、拍手あり。勢い、人間の愛ある人生のスタートダッシュを彩る髙橋さんのショップイメージもふくらんで、大きな夢が広がっていく。

そんなロマンあふれる感動の街の瀟洒な建物を入ると早速、髙橋さんの熱い志が伝わってくる。もう何度もテレビや雑誌で拝見しているが、やっぱり空間全体が髙橋イズムを発信しているようだ。何かほっとすると同時に、ジュエリーづくりの繊細な指先がさまざまなイメージを描かせるようだ。やっぱり、あの指が400年の伝統をよみがえらせ、次代への契りを約束しているかと思うと、そこに並ぶジュエリーが一段と輝いているように見える。


すると、ここはやっぱり杢目金にすっかり心奪われたという髙橋さんのこだわりを頭に刻まなければというものだ。HPによると髙橋さんはこんなニュアンスの言葉を載せられている。

杢目金との出会いは在学中からに始まる。いまから400年前の江戸時代に生まれた、金属の色の違いを利用して木目状の文様を作り出すという我が国独自の繊細な金属工芸技術に魅せられた。その後も、この技術をこのままにしておいてはダメだ、後世に残していかなければ、という思いが日増しに高まっていき、自ら先頭に立ってその原理や手法を身に着けていこうと決心した。だが調べてみると、加工工程が複雑で、文献などもあいまいなところが多く、その技術習得なんてとても余裕のあるものではない。それでも乏しい文献や資料を調べていくうちに、この金属工芸技術の価値は実に奥深く繊細なものがあり、わが国が世界に誇れるものがあるということがおぼろげながら見えてきたので、ここは一発奮起、この技術に特化して、究めていこうと決心したということだ。

●最古の杢目金技術を現在に蘇らせる

小柄 金銀地杢目鍛 復元制作

髙橋さんの若い頃の言葉を思い浮かべると、改めて歴史の重みを感じる。そして、HPなどでも紹介されているが、最古の杢目金のルーツに取り組み、それを自らの手で復元されたイメージを描くと、髙橋さんの尽きない好奇心に魅せられていくばかりだ。HPによると、こんなニュアンスで紹介されている。

400年前の江戸時代に始まった杢目金技術のルーツは、現在は秋田県指定有形文化財に認定されている出羽秋田住正阿弥伝兵衛が小柄に施したもので、現存する最古の木目金である。髙橋さんはそれを日本で最初に復元されたが、その技術を途切れなく、この国はもとより世界中の人々に提供していこうということで、学校を卒業すると、その名もずばりの『杢目金屋』という自分の事務所を立ち上げられたのだ。


そこにあったのは杢目金のこだわりから始まった“髙橋の人生ここにあり”ということだろう。杢目金という由緒ある技術の火を消すことなく、後々の世まで伝えなければならないという髙橋さんの熱きこだわりが見事に結集。ジュエリーの世界に新しい生命の輝きを灯されたのである。現在は婚約、結婚指輪はじめ多種多様なジュエリーに加え、美術工芸品の制作などにも深く関わっておられるが、その繊細で遠大な技術はまさに日本のジュエリー文化の新しい流れの生き字引を担っているのだ。

大輪の花に穏やかな小花ありということか、人触りのよい、趣のあるお店に、個性的な髙橋ブランドジュエリーが品よく並ぶ。思わず、きらきらとした輝きに見いってしまうが、WEBなどと違った一つずつの存在感に心が和む。そこに記された名称もロマンティックでやさしく、さまざまな映像イメージを描かせてくれる。『桜一輪』、『恋風』、『弓桜』、『桜こころ』、『桜あわせ』なんて、先頃の「令和」同様の日本の古典に出てくるような優しい響きに改めて魅せられてしまうではないか。一点一点に髙橋さんのジュエリーに対する優しい心根が込められている。そこにあるのはただ一つ、“愛あるご結婚おめでとう。その契りを絶やすことなくいついつまでもご一緒に”ということなのだろう。髙橋さんの愛ある応援メッセージに包み込まれでいくではないか。

●お客様オリエンテッドなあくなき追求

ところで、日本の伝統的な技術から発展されたジュエリーに対する熱い思い、髙橋パラダイムともいうべき成長事業の秘密をもう少し知りたいので、HPでも紹介されているが、その大要に着目させていただいた。成長の舞台裏に髙橋さんの熱い思いがあるということだろう、実に多くのアイテムが網羅されているが、なるほど、なるほどと肯首させられるものばかりだ。

とにもかくにも大事にしていることはたくさんと思うのだが、一番に挙げたいのは「生涯保証」という観点から専門職人の手による品質管理の徹底を基本に、指輪を交換されるお二人のリングカルテの作成から始まってジュエリーの制作、メンテナンス、クリーニング、サイズ直しなどにきめ細かく対応する体制を確立しておられることだ。そこには、日本初の杢目金のオーダーメイド専門店としての実績、経験が裏付けされているが、信頼のできるジュエリーが安心して求められるということなのだ。特に杢目金については日本で唯一の専門の『特定非営利法人日本杢目金研究所』を設立されているので、杢目金の研究、文化財の保存、加工技術情報の提供なども積極的で、多くのお客様に信頼をえておられるのだ。

ジュエリーは何度も購入されるものではないし、それなりの価格がする。そのために、お客様は納得できるブランド品を、納得できる価格で買い求めたいというのが一般的だ。裏を返せばそこで要求されるのは安心と信頼できるデザイン力からくるブランド価値なのだろう。そこで、髙橋さんはブランド価値を高めるという観点から『GOOD DESIGN賞』をはじめ数多の栄誉ある賞を受賞することにも積極的だ。世界の最高峰の『Red Dot Design Award』、経済産業省の『ものづくり日本大賞』、『おもてなし規格認証』、『おもてなし経営企業選』などはその顕著な現われで、お客様の高い信頼と共感を得ておられる。また、『JJA認定(ジュエリーコーディネーター在籍店)』、世界に認められた知的財産の取得、国際規格『ISO9001』の認定などを見れば、ジュエリーの世界における知的行動集団としてのエネルギッシュな事業展開に拍手を送りたくなるではないか。本当に心強い。

●成長、発展の舞台裏にある髙橋パラダイム

まさに事業の多様な発展の裏に、全社的な飛躍のタネがあるということだろう。改めて髙橋さんの伝統的なものづくりから始まった杢目金の存在感、さらには未来感に魅せられるではないか。元気な髙橋パラダイムが元気に息づいているのだ。

髙橋さんたちはより満足いただけるジュエリーをお届けするために多様な事業展開をされているが、同時にすべての人々の安らかな暮らしや生活のために惜しみないエネルギーを注いでおられる。いまや時代の代名詞になっているコンプライアンスということだろう。企業の社会的な信頼、信用という面から、人と環境にやさしい触れ合いプログラムを軌道に乗せておれられる。例えば、出版普及活動として『木目金の教科書』の企画・監修をされたし、我が国を代表する名刀などの復元研究、障害者雇用の拡大といったことにも力を注いでおられる。また、地域や環境に優しい街づくという観点からエコキャップ活動、グリーン電力サポート、伝統文化の継承、古民具の採用、桜並木プロジェクト支援、清掃活動の参加、グリーンバードの参加、使用済み切手の寄付活動などにも積極的で、髙橋さんにとっては重要な未来ミッションなのだろう。

まさに今日の時代の企業に求められる人と環境にやさしい最重要事項に照準を合わせ自らの事業の行く手を描いているということだろうか。成長発展する事業にコンプライアンスありということの生き写しだ。伝統的な事業から始まった未来先取りのベクトルを止めることなく、さらなるこだわりの未来軸を示してほしいではないか。まさに、時代は創るから面白いのだ。

文 : 坂口 利彦 氏