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こだわり人[2020.01.22]

伝統の上に描かれる最先端、町工場のこだわり / 細見工業株式会社(東京都・葛飾区)

平成から令和へ。変わる時代の波長に乗って、モノづくりの企業なども早くも“昨日から今日へ、そして未来へ”という行動基軸を描き、その足取りを速めている。外務省では令和を英語ではBeautiful harmony(美しい調和)と説明するそうだが、明るい夢がある言葉ではないか。その象徴的な出来事として、このほどのノーベル賞を受賞された吉野彰さんのリチウム電池を語る人も多い。自治体などの行政も、地元のものづくりの推進・産業の振興を掲げて、さまざまな施策を展開している。やっぱりこの国の行く手にはモノづくりは重要アイテムということなのだ。

そんな折にまたまた気になる話を東京・葛飾区の方が聞かせてくださった。いつも送ってくださる地域ブランド発信事業の一環として実施されている『葛飾ブランド 葛飾町工場物語』は好評ですと記し、「第2回(2008年)に展示ケースで認証された細見工業株式会社は元気ですよ、坂口さんの関心の高い展示イベントや文化施設や商業施設のディスプレイ什器や設備機器を、デザイン設計から製作、施工、取付けなどを一貫して行う企業として、パワフルに事業を展開されています。2019年の流行語大賞にもなった“ワンチーム”という想いを実感しますよ」だ。

あれから11年。確かに読んだことがある。記憶に新しかったので直ちに第2回の小誌を取り出すと共に同社のホームページに見入ってしまった。便利な世の中になったものだ。ホームページを見ると、この会社の現在の状況を知ることができる情報が次から次へと入手できるではないか。細見大作社長のアグレッシブな事業姿勢や制作事例などが東京都のホームページ『東京カイシャハッケン伝』や日経新聞や産業誌、業界誌、地元紙などに載って次から次へと出てくるのだから、改めて細見工業に魅せられていくというものだ。これは気になる。“思いやり”を経営理念に掲げ、全社員一丸となって世界に一つだけと誇れるディスプレイ什器等にこだわっておられるのだ。まさにこの国が誇る元気な町工場のシンボル的な存在ではないか。

ということで、今回は下町の町工場からこだわりの逸品を届けられる細見工業の元気な事業展開に着目させていただいた。

こだわり人 ファイル088

伝統の上に描かれる最先端、町工場のこだわり

細見工業株式会社(東京都・葛飾区)

●地域密着型のものづくり

細見工業は創業者の細見浩司氏が立ち上げられ、ディスプレイの展示ケースや装飾金物の板金工事などを主たる事業とされていたのだが、1988年に株式会社にして1981年に本社兼工場を現在の葛飾区・小菅に設けられたのである。大型の物件などにも余裕を持ってさまざまな物件に対応できる町工場として大躍進。2003年に子供の大作氏が引き継がれたものである。ある面では下町の町工場などでよく見られる典型だが、問題は先代以上の技能が備わっているのかということだが、その後の足取りを見れば歴然としている。『ISO90001品質マネジメントシステム』や『葛飾優良工場』など数々の認定企業に輝いておられる。

葛飾区は東京都でも上位から3番目に工場が多い所で、この「こだわり人」でもこれまでに上田銀器北星鉛筆杉野ゴムの3社を紹介させていただいたが、いま思えばいずれも地元にしっかりと根を下した地域密着型のものづくり工場として魅せられるばかりだった。今回の細見工業もまた一味違ったものづくりにこだわる企業として目が離せなく、先代のものづくり魂を受け継いだ若き情熱社長が50年にわたるノウハウを元に時代の最先端に挑んでおられるのだ。

正直言って小菅という所は東京拘置所がある所ということを知るだけで、行ったこともなく、何かおどろおどろしいイメージを勝手に描いていた。だが、御免なさいだ。荒川に沿った昔ながらの伝統ある土地に馴染む町工場があちらこちらに散在していることを葛飾区のホームページなどで知って、“ものづくりの街、葛飾区”の存在を再認識していたものだ。だが、降り立った東武スカイツリーラインの小菅駅前は思ったより静かで、工場音なども全く聞こえてこないのだ。本当にここが ものづくりの街なのかと思いながら。荒川に沿って道なりに歩いていった。

小菅の駅から歩いて約8分。荒川から吹き寄せる風も穏やかで、ちょっと小春日和の温かさに身も心も和らぐ。これから訪ねる細見工業の元気さの前触れのようで、ホームページなどで見ていた細見社長の明るい笑顔が重なってくるのである。

●“想いやり”を経営理念に掲げて

その道筋で工場などの表記を何度も見かけたが、相変わらず工場音などが聞こえず、ある面では住宅街を歩いているようなのだ。すると、めざす細見工業の本社兼工場が目に入り、入り口に掲げられた洗練されたデザインの社名に引き込まれるように中へ入ったのである。やっぱり、喧騒とした工場音も油などでくすんだ様子もなく、工場というより明るくおしゃれなクリエイティブのデザイン事務所を訪れたような雰囲気で、またまた自分の単純なイメージに恥じるばかりだ。

迎えてくださった総務部長の細見さんの奥様と担当者の斎藤さんの柔らかい物腰に、細見社長の言われる“人にやさしい思いやり経営”を早くも目の当りにしたのである。確かに、ここには従来的な町工場のイメージはなく、ホームページなどで何度も見ていた“私たちはお客様が伝えたいことを実現するために、共に考え提案する「モノづくり」の会社です”を実感するばかりだ。すると総務部長は言われたのである。

「細見工業の経営理念は思いやりです。創業してから半世紀たちますが、基本はお客様、会社の仲間、協力会社の方々、一つの物事に関わるすべての人たちを思いやることです。それによってどんなお客様にも喜ばれますし、従業員は働きやすい、一緒に働きたいということですよ。相手の気持ちを常に考えて行動することによって、より良いものを納得してお届けできるんですね」

まったくその通りだ。あらゆる企業の出発点は思いやりありきだ。そして言葉を付け加えられたのである。

「私たちの強みは、現在よく言われる“ワンウェイ”という陣形で、多様なお客様ニーズに柔軟に応えることにこだわっていることです。創業以来、ディスプレイの金物設備や什器に特にこだわっているのですが、デザインから始まって設計、制作、施工、取り付けまで一貫して自社で賄える体制を整えています。社内に設計事務所と多様な機器を設置した製造工場を併せ持つことによって、一気通貫というワンウェイサービスを徹底しているんです。オーダーメイドの製品も考えた設計に確かな試作、施工。設計の変更などにも即座に対応しますので、多くのお客様に喜ばれています。」

●“細見製品の裏にスガツネ工業の安心と信頼がある”の有難い言葉

なるほど、ものづくりについて確かな理念があり、その理念の上で事業が展開されていることがよくわかる。そこに、細見社長が来られて開口一番こうだ。

「スガツネさんの金物はよく使っています。お客様に納得いただく商品をお届けするのには、やはり私たちのことをよく理解し、安心と信頼できるスガツネ製品が欠かせません、細見工業の安心の裏に信頼のスガツネ工業ありですよ」

ありがたい言葉だ。思わず場がほころびお礼を言うと、細見工業の現在の事業分野についてパソコン映像を駆使しながら話されたのである。

「基本的にディスプレイに関わる分野なら、どんなことにも対応できますが、現在は文化施設や商業施設で使われる展示ケースや設備家具や器具・什器をはじめ、展示会やエキシビションの装飾金物、サインやモニュメントの造作物にこだわっています。また、近年は伝統の技術を活かして、スチール、ステンレスなど各種金物の板金や溶接などにも窓口を広げています」

そこで、工場音などもなく、穏やかな感じの作業現場を案内いただいた。すると、東京都知事許可(版19)第106647号 板金加工業、建築工事業、硝子工事業、鋼構造物工事業、内装仕上工事業の名札があり、熟練された職人さんと使い込んだ製造機器や真新しい設備機器に取り囲まれたのである。職人さんの手足になるプレス、カッター、ベンダー、溶接機、パンチプレス、レーザー加工機等々が並び、今まさにひと仕事を終えた雰囲気なのである。

作業現場(上段)と、工場から臨む 事務所(下段)

先程言われた大物の物件にも対応するというスケール感に、これらの機器が駆動している姿が自然と思い浮かび、ボクの納得感、安心感がどんどん広がっていくのである。すると細見社長は「私どもの“ワンウェイ”について」と言って、仕事の流れを紹介されたので、その大要を紹介しておこう。

●“眼光紙背に徹した”ものづくりへのこだわり

「私たちのお客様は官公庁、博物館、学校、病院、企業、店舗等々とさまざまです。いつ、どこで、誰に、何を伝え、どう感じてもらいたいのか千差万別です。それには“眼光紙背に徹す”という目の光が紙の裏まで通るという観点から、表面の意味だけではなく、その裏に潜んでいる深い意味まで理解することに徹して、まずはお客様と打合せをし、どのようなものをどのような品質で作りたいのか確認し具体的な提案をします。

 次いで、提案事項に基づき、具体的な作り物の設計図面を起こしお客様に承認をいただいた上で、製作図面を起こします。やはり製作図面の承認をいただいた上で、切断、折り曲げ、溶接などのものづくに徹し、出来上がりますと現場での施工や取り付け作業に入ります。

 施工後は安全に取り付けできているかなどの確認、検査を行いますが、私たちの作業はこれだけでは終わりません。保守、メンテといった作業を行い、常に安心して使われているかをチェックさせていただいて、もし問題などが発生すれば即座に対応させていただきます。まさに至れり尽くせり、ワンチーム魂の実践です。納得できる製品の誕生から維持、促進、安心利用に徹底的にこだわっているんです」

理念があって、具体的なものづくりがある。“眼光紙背に徹した”ものづくりがある。細見工業のこだわりのものづくりに改めて勢いを実感だ。納品事例などの多くの写真を見せられると、納得感は増していくばかりだ。いくつかの実績事例を写真でご覧いただこう。


まさに細見工業ならでのこだわりが集積されているのだろう。例えばワンチームから生まれる展示ケースなどを見てもこだわり満載で、強度、セキュリティ、耐震性に満足いただくと共に、鍵穴などを見せない要望を可能にしたり、熱や光や温度といった気密性、さらには使いよい機能性、デザイン性を徹底追求されているのだ。

さらにさらに、与えられた納期やコストも重要な案件で、すべてに誠意をもって対応されているということであり、その根底にあるのは、“思いやり”から生まれるワンチーム精神と一人一人の達成観だそうだ。結果的に、そのような姿勢に対する賛同の輪が広がって「平成26年の『葛飾区優良工場』『魅力ある中小企業』、さらには平成28年の東京都の『従業員の定着促進等の処遇改善に取り組む企業』などの認定につながったものだと思います。」と言われるのだから嬉しいね。微に入り細にいり、ディスプレイ業界の行く手に光を投げかける情熱の細見社長だ。

●ものづくり葛飾から世界のものづくりへ

思えば、ディスプレイの世界はデザイナーや設計者のクリエイティブイメージとそれを具体的な形にする現場の職人の協働作品だ。言葉を変えると、イメージとそれを形にするリアルの共存だ。絵に書いた餅ではなく実際に餅を加工して食卓に置かなければならないのだ。そういう意味で、ものづくりの舞台裏にある細見工業のものづくりに魅せられるばかりだ。父親の伝統的なこだわりを継承しながら“思いやり”をしたためて、オンリーワンのチャレンジ精神を一段と強固なものにしてほしいものだ。

思いが形になっていく。まさに細見工業はものづくりの街、葛飾区のエンジンだ。これからも先導的な役割を存分に発揮し、葛飾区を越え、世界のものづくり事業のけん引車としてさらなる夢を広げてもらいたいものだ。

~ワンポイント~
スガツネ工業のガラスショーケース用金物GS-Gシリーズは、フラットでシャープなデザインが特長。大切な展示品の付加価値を高める意匠性と、簡単施工の機能性を兼ね備えています。

文 : 坂口 利彦 氏