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こだわり人[2020.11.06]

モノの動きをデザインする最先端のこだわり。『モーションデザインテック』/スガツネ工業(東京・千代田区)

  新型コロナウイルス問題により生命と経済という観点から、人々の毎日の暮らしやビジネスに大きな変化が表れているいま、あのホンダ自動車の生みの親である本田宗一郎氏の"3つの喜び"が改めて光を浴びている。若い頃に小生も、本田氏の"3つの喜び"という言葉に魅せられ、「製品を創る喜び」「製品を売る喜び」「製品を買う喜び」という3つの喜びに心酔し、製品哲学の原点を学んだものである。
  ところで、新型コロナウイルス問題以降の時代の変化を思うと、あのホンダの3つの喜びに再び光が当たり、「製品を創る喜び」の必要性が一段と望まれてきているのである。結局、経済の進歩、発展の原動力は製品に尽きる。このコラム風に言えば、こだわりのあるモノづくりがこれまでも、これからも重要だということだ。スガツネ工業もここに軸足を置いて、創っているものは違っても、動きを創造する最先端のテクノロジー『モーション デザインテック』を重要な事業の柱にしている。モノの開け閉めなどにさらなる付加価値を与える機構として、絶大の信頼を得ている。

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  そこで今回は今一度、スガツネ工業のこだわりの技術である『モーション デザインテック』の大要はもとより、その中の「ソフトモーション(ゆっくり動く)」に分類される独自のダンパー機構『Lapcon(ラプコン)』に焦点を合わせ、その多彩な魅力を紹介させていただこう。


モノの動きをデザインする最先端のこだわり。『モーションデザインテック』
スガツネ工業株式会社(東京・千代田区)



●企業に求められる3つの喜びに向かって

  モノの原理、原則からさまざまな動きをデザインする『モーション デザインテック』はスガツネ工業ならではの独自性のある"動き"の技術である。その意は『モーション(動きを)』『デザイン(創造する)』『テック(テクノロジー)』。現在は5つの動きの中から作業環境にあった動きを選べば扉や蓋の操作性を大幅に向上させ、家具や装置、設備の付加価値を一段とアップさせることができるということで、さまざまな業種から注目を浴びている。
  では具体的にどんな動きに着目が集まっているのだろうか。添付のイラストに合わせてご覧いただくとよりわかりやすいだろう。

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  ①ソフトモーション

  すーっとゆっくり扉や蓋が動き、安心・安全を提供する。スガツネ独自のダンパー機構であるラプコンが利用された製品も数多く、指挟みなどを防ぎ、扉や蓋のソフトな動きは高級感を演出する。

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  ②フリーストップモーション

  摩擦を利用したもので、ストッパーなどを操作することもなく、開閉中の扉や蓋、カバーを任意の位置で止めることができる。

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  ③パワーアシストモーション

  バネの反力を利用し、重い扉や蓋やカバーをふわっと、軽々開閉することができる。力の弱い方でも片手で楽々開閉ができ、働く環境のストレスを軽減する。

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  ④クリックモーション

  クリック機構を利用し「カチッ」とはまって止まる動きによって、開閉中の扉や蓋、カバーを独特の感触とともに一定の角度で仮保持する。開閉に確かな手ごたえをもたらす。

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  ⑤ユニークモ―ション

  クリック機構を利用し「カチッ」とはまって止まる動きによって、開閉中の扉や蓋、カバーを独特の感触とともに一定の角度で仮保持する。開閉に確かな手ごたえをもたらす。

●ものの動きに着目した『ラプコン』。
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  以上、『モーション デザインテック」の5つの基本的な動きを紹介したが、今回はその中でも①ソフトモーションに分類されるスガツネ工業オリジナルのダンパー機構『Lapcon(ラプコン)』について、その動きの開発に当初から携わっている、スガツネ工業 千葉工場開発課 大嶋氏に話を伺ったのでその大要を紹介させてください。
  「ラプコンはLamp Control(ランプ コントロール)を縮めて作った造語であり、ソフト・スムーズ・ショックレスをコンセプトに開発された"動きの総称"を意味しています。重たい扉がバタン!と閉まったら指を挟んだりして危険ですよね。そんな危険を解消するためには究極のところ、扉なんてなければいいんですが、そうもいきません。そこで今から30年以上前に開発に携わっていた私たちが着目したのが粘性体、いわゆるねばっとした液体です。100種類以上のサンプルを用意し、製品ごとに適した調合を行い、試行錯誤の末、ラプコンを開発しました。
  ラプコンには、『せん断機構』と『オリフィス機構』の2種類の抵抗を利用した機構があり、製品ごとにどちらかの機構が使われています。この2つの抵抗を利用した機構は、機械設計の世界では100年以上前から当たり前にある事実でしたが、これを具体的に実用化した会社が当時なかった。そこで私どもは、この抵抗の力を使って動きをコントロールすることはできないかということに着目したんです。

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オリフィス構造

せん断構造

  この抵抗を利用する、といっても当時は一筋縄ではいかなかったそうである。当時のことを大嶋氏はさらに熱く語られる。
  「一番苦労したのは、化学と機械工学の"相関関係"です。通常、粘性体の粘度の単位は化学のストークス(St)という単位を使いますが、われわれ部品メーカーでは機械工学のトルク(N・m)という単位を使って開発・製造を行います。ラプコンを開発するにあたり、この化学と機械工学の異なる力の単位を相関させるのに、それはとても苦労しました。当時は今みたいにネットもない時代ですし、簡単に調べて答えを導くこともできません。地道に探り続けるしかありませんでした。
  しかも、私たちは芸術作品を創る芸術家ではなく、工業製品を創るメーカーですから、開発に使える時間もお金も限りがある。そんな制約のある中での開発は決して楽ではなかったですし、今でもとても印象に残っていますね」

●スガツネ工業の顔になったこだわりのラプコン。

  大嶋氏の当時の苦労に改めて教えられる。「こんな一言では語りつくせん」という苦労が想像できるというものだ。 それでも1988年に待望の製品化に成功。今日のラプコンという、動きを創造する最先端のテクノロジーをこの世に生み出されたのだ。だが、市場に定着するまでに苦労があったそうである。
  「製品化できたときは、それはとてもホッとしたのを今でも覚えていますが、すぐに我々の直接のお客様(企業様)からの評価が得られたわけではありませんでした。しかし、その機能や安全性が徐々に国内のみならず世界中に認められるようになると、製品を日々使われるエンドユーザー様側からの視点で市場での価値が高まり「ラプコン=スガツネの技術」と評されるようになりました。開発の人間としては、開発した製品が大量に売れ始め、市場評価が長年変わらないことが何よりの評価だと思っています」

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  自ら開発にかかわったこともあって、大嶋氏のラプコンの現在、未来について熱い。 「ラプコンは私どもの開発チームとしても、長年愛され、今後も変わらぬ安全性をお客様へご提供できるものとして、大変誇りをもっています。現在に至るまでスガツネ工業の技術の象徴として家具金物・建具金物のみならず、産業機器分野でも日々お客様の課題を解決するためのコアテクノロジーとなっています。既製品の製品数は70種以上。皆様の身近なところで、使う人へより一層の安全とやさしさ、高級感のある優雅な動きを提供し続けています。また、スガツネ工業で培われたノウハウで、数多くの粘性体と機構を組み合わせ、お客様の納得のいく動きを共に追及し、特注製品などのご相談にも対応しています。

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  動きの開発はまだまだ続いていきます。時代のニーズの変化に合わせて常に改善・改良・先行開発には手を抜きません。利便性を追求すれば、市場は必ず存在します。この"利便性の追求"は開発者がどれだけ感性豊かに、発想力、想像力をもって考えられるかが鍵になっていると思います。スガツネ工業はなにも、ダンパーに力をいれダンパーを開発しているのではなく、"動きをコントロールする、デザインする"という目的に力を入れ、動きに付加価値をもたせた金物によって、皆様の生活を豊かにしていきます。今後生まれる付加価値は、今ある5つの動きだけではないかもしれません。ぜひ今後も期待していただければと思います」


●ここにスガツネ工業のこだわりあり。

  この開発者の思いがまさにスガツネ工業のこだわり技術を象徴している。あの本田氏の3つの喜びの製品哲学に改めて教えられるというものだ。

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  新型コロナウイルス問題などに怯まず、新しい価値観を秘めた企業の存在感、さらには未来観を描いていくには、今こそ微に入り細に入り設計者、利用者、社会の人々に目を光らせ、全身で勇気をもって挑めということだろう。そのための施策としとしてすでにさまざまな展開を講じているが、ものの動きの面から、デザインの面から、さらに空間の面から多彩な製品をWEBサイト『スガツネット』で体系化しているので受け止めやすいのではないだろうか。しかも、この『モーション デザインテック』についていえば、多くのお客様に喜ばれている『選定ツール さスガくん』といったサイトを立ち上げているので是非ご覧いたきただきたい。例えば、設定する扉の動き、質量や重心などを入力するだけで必要トルクを自動計算し、該当するヒンジやステーなどの製品を即座に選定できるので実に効率的で便利である。使い方は初めての方でも簡単だから是非アクセスしていただきたい。付加価値機能を持ったヒンジ、ステー、ガススプリングなどが自由に意のままに安心て使えるということである。

  この分野のトップ企業として特注品の要望にもお応えしているので何なりとお声をかけください。機能追加、寸法変更、新規開発にも柔軟に対応することができる。まさに、日常から変わって行く新しい価値観の誕生、未来への誘いだ。

文 : 坂口 利彦 氏