こだわり人[2020.12.07]
ものづくりスガツネの生き字引。フラッグシップブランド『Zwei L』/スガツネ工業(東京・千代田区)
心のウキウキはもう戻ってこないのだろうか。新型コロナウイルス問題以降の経済の先行きなどを思うと、改めて考えさせられる。政治や経済学者の市況などのコメントを聞いていると、ついつい暗くなってしまう。コロナによる落ち込みは深刻で、晴れの日はいつかやってくるのだろうか、余談は許さないということなのだろう。ものづくり日本、どこに行くかだ。

思えば、ものづくりのスガツネ工業は今から約20年前、2000年代初めごろ、一つの歴史的エポックに遭遇した。言葉を変えると、スガツネ工業にとってその後のスガツネブランドに加速度を与える重要な判断になった製品があるのだ。2000年といえば、世界中の企業は『2000年』という新しい年号に乗って事業の見直しや新たな商品づくりに踏み出した熱気にあふれた時代だった。スガツネ工業もその流れに先立ってトップの菅佐原氏自らが先頭に立って新しい製品の開発に踏み出したのである。それが今日のスガツネ工業のフラッグシップブランドとなっている『Zwei L(ツヴァイル)』という輝きのある製品である。当時の様子を製品化に携わった仕入部 鈴木氏、技術設計部 佐藤氏は感慨を込めて次のように話しているが、まさにものづくりスガツネ工業の屋台骨を支える今日の重要な製品になったのだ、と感じざるを得ない。それでは今回は『Zwei L』というこだわりの商品にスポットライトを当てて、その多様な魅力を紹介させていただこう。

ものづくりスガツネの生き字引。
スガツネフラッグシップブランド『Zwei L』
スガツネ工業株式会社(東京・千代田区)

鈴木:「Zwei Lの始まりは2000年初頭です。ものづくりのスガツネ工業の事業マインドを込めた製品を創ろうということで構想がスタートしました。私ども金物メーカーとしてのノウハウを生かして我が社の顔となる製品づくりに取り組んだのです。そして2年の構想を経て2003年に東京・日比谷の国際フォーラムで開催したプライベートショーで初披露させていただいたのですが、その存在感は見事に開花して、展示した10品目の前には多くのお客様が集まっていました。製品のラインアップはもとより、製品のコンセプトを多くの来場者や業界関係者の方に説明させていただき、そして共感していただきました。従来の考え方を飛び出し、「トータルコーディネート」といったコンセプトにレバーハンドル、丁番、戸当りなどの建築金物・家具金物をラインアップしたことが受け入れられたんですね。例えばバスルームのガラスドアのハンドルや丁番、戸当り、さらにはタオル掛けやフック、スイッチコンセントプレートなどに至る細部までZwei Lでトータルコーディネートすることで、空間に統一感を持たせ、その空間の価値を上げることができます。」

佐藤:「『Zwei L』という製品名に込めた製品コンセプトをしっかりと定着させるため、また日常生活での使用感を考慮し、標準化を基準とした設計を採用しています。すべてのZwei L製品は黄金比率<1:1.618>からインスパイアを受け、美しい相似形をデザインに落とし込んでいます。そのデザイン・仕上げの美しさは日本が誇る技術の賜物として、国際舞台でも十分なポテンシャルがあると考え、近年は欧米をはじめとした展示会での展示も活発化しています。
また細かい話ですが、社内では『Zwei Lブルー』と呼んでいますが、Zwei Lはブランディングとして使用できる色もしっかり指定されています。もともと弊社のコーポレートカラーには青色があるのですが、これに高級感、ロイヤル感を出すために少し紫がかった色をZwei Lブルーとして選定しました。これも数あるカラーサンプルの中から、菅佐原をはじめ関係者で何度も何度も話し合い、今の色へと落ち着きました。」
●スガツネ史上に燦然と輝く「2つの光」。
スガツネ工業の歴史的所産というべきZwei Lはスガツネ工業独自の技術の集大成である。Zwei Lは『2つの光』という意味を持ち、その輝きのある存在感がこだわりのスガツネ工業の生き字引になっていることをご存知だろうか。ショールームや展示会などでいつも多くのお客様を魅了しているが、今一度、その製品コンセプトを紹介させていただこう。繰り返しになるがZwei Lは『2つの光』という意味を持つ、スガツネの造語である。ドイツ語のZwei(2つ) Lichter(光)から由来し、高精度な2つの磨きが生み出す、芸術的な光を示している。澄んだ湖水の深淵を思わせるミラーの輝き、上質のシルク糸を紡いだように艶やかなサテン仕上げ。『Z』は究極を意味し、『L』は光と共にのスガツネ工業の『LAMP』を示唆するフラッグシップブランドである。言葉を変えると、究極の2つの仕上げを徹底的に追求して、さまざまな着地点をクリアした製品であるということである。
その一つが『鏡面研磨』、もう一つが『サテン仕上』である。それぞれについてもう少し詳しく紹介すると、『鏡面研磨』は通常は粒度#800程度の番手を使って研磨作業を行うが、Zwei Lは#1200以上という細粒で綿密に磨き上げられている。同時に、シャープな印象を維持するため『ザラツ研磨』と呼ばれる高級時計や宝飾品の研磨に使用される下地処理を徹底させて、通常の5倍以上、15工程以上の工程を行ってエッジ部分のダレや鏡面部の歪みを防いでいるのだ。
またもう一つの『サテン仕上』では、研磨時に生じる熱で目が焼けないように細心の注意を払い、ラインの切れ目やカーブのゆがみが出ないように仕上げられている。Zwei Lは製品バリエーションが豊富で、小さなフックから大きなドアハンドルまで製品サイズは様々ある。そのさまざまなサイズ展開でも統一感が失われないよう、サテンの粗さを製品サイズ毎に変えるなど、決して妥協のない、究極の仕上げを追求している。
<Zwei Lの製作工程>
引き抜き: 熟練職人たちが、温度調整にこだわり、部材を作成
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カット:後工程の曲げ作業を想像しながら、部材をカット
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曲げ:部材を曲げ、製品の形を整えるため、両端をさらにカット
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切削:滑らかなカーブに仕上げるため、曲げた際に膨らんだ部分を切削
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研磨:鏡面研磨、サテンそれぞれの仕上げにむけ、各15工程以上の作業を実施
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検品:専門検品担当者が、サンプルとチェックリストに照らし合わせながら確認
さらに、そのこだわりの上に立ってZwei Lに使われているステンレス鋼(SUS316)は、ステンレスの中でも特に優れた耐食性を誇る。デザイン・仕上だけでなく、素材にまで徹底的にこだわり、末永くラグジュアリーな空間を演出し、安心して使える耐久性を提供している。
●至れり尽くせり。こだわりのJAPAN PREMIUM QUALITY

ではここで、開発担当者の一人である技術設計部 佐久間氏にもう少し詳しくZwei Lの魅力を聞くと、彼女は次のように語っている。
「『美は圧倒的な細部に宿る』 という観点からハンドル、つまみ、ドアハンドル、フック、吊り金具など20品目50点以上の製品をラインアップしていますが、
特筆すべきは製品一点一点の品質の確かさです。デザイン、機能、素材などにこだわり、高品質の理想の製品を生みだしているのです。具体的言うと、引き抜き、カット、曲げ、切断などの製造工程へのこだわりはもとより検査、梱包などにもこだわり、ワンランク上、ひと味違う愛される製品づくりに終始しています。すべてに高級感のある製品を届けるための一里塚を突破しようということですね。妥協を許さない検査基準、さらに梱包形態に至るまでのこだわりは、まさにものづくりスガツネ工業の魂の根源というものですですので、製品をデザインしてから製品化されるまでも、他の製品とはスピード感や求められるレベルがひと味もふた味もちがう。見た目のデザイン性だけでなく、機能性や空間全体とのバランスが合わないと検討テーブルには上がらないし、そのあたりが非常に難しいです。勿論他の製品が劣っているわけではあり
ません。Zwei Lとして製品を生み出す際は、 Zwei Lのブランドに恥じない妥協のないデザインが求められていると感じるんです。」

至れり、つくせりのZwei Lだ。今日も、この瞬間にも研ぎ澄まされた製品に一段と磨きが加わっている。その様子を何度もご覧になっている乃村工藝社の国際的なインテリアデザイナー、小坂竜氏から次のような声をいただいた。「スガツネ工業のものづくりマインドは流石ですね。徹底していますね。伝統あるこだわり製品は私どもにとっても欠かせないんですよ。世界の商業施設や公共施設でも使ってみたいと思える、納得できるんですよ。そう意味で言うと、スガツネ製品は今や国境なき国際品ですね。これからも弾んでください。飛んでくださいです。」
ありがたい言葉だ。まさにスガツネ工業がめざすところだ。すると小坂さんは言葉を加える。
「未だ新型コロナウイルス問題で世の中が混乱している中、スガツネ工業のフラッグシップブランドにこれからも期待したいですね。元気なこの国のものづくりのトップリーダとして、今日も私たちのそばで、輝かしい日常を描いてくれていますよ。私たちの声をどんどん届けていきたいですね。一緒にJAPAN PREMIUM QUALITYを発信していきたいです!」
文 : 坂口 利彦 氏