こだわり人
[2021.01.12]
品質を制するものが時代を制する。ものづくりスガツネ工業の底力とこれから/スガツネ工業(株)
"ものづくり日本、万歳"。このコラム『こだわり人』も早いものだ。平成24年(2012)から始まって早くも9年。連載掲載も95回を迎えることができた。短くもあり、長くもありというのが正直な実感としてあるが改めて、これまでご登場いただいたこだわり人にお礼申し上げると共に、長きに渡ってご愛読いただいた方々に謹んでお礼申し上げる次第です。ありがとうございます。
今回を以て、本コラムは一旦幕を下ろさせていただきます。創業以来、ものづくり企業を標榜するスガツネ工業の熱い志を伝えると共に、ものづくり日本の多様な動きを身近に受け止め、共に享受していこうという思いからスタートさせていただいてきましたが、その役割に封をすると共に、新型コロナウイルス問題などによって起きた企業の経営基盤の見直しや広報活動の多様な展開―ひいては未来を見据えた企業の新基軸が問われる現在、新たな事業観、未来観を構築していかなければならない思いです。もちろん、これは私どもの企業だけの問題ではなく、全世界的な問題で、商業資本主義に支えられているこの国の未来を思うと、ものづくりに特化したスガツネ工業の最重要課題でもあるということであるのです。言葉を変えると、コロナ時代に立ち止まらず、行き先を見つめ、これからもお客様と共に生き残っていこうという呼びかけであり、その実践であるということである。
そこで今回は、本コラムの最終回ということで、ものづくりスガツネ工業の原点である"商品の品質管理"ということに焦点を合わせて、その基盤と実践について紹介させていただきたいと思う。
【最終回】品質を制するものが時代を制する。
ものづくりスガツネ工業の底力とこれから
スガツネ工業株式会社(東京・千代田区)
●3万点以上の心の原点。
ものづくり日本。世に言う品質管理こそがものづくり企業の最大のテーマではないだろうか。世界の企業史を見ても明らかのように、ものづくり企業のすべてがここに主眼を置いている。もちろん、スガツネ工業も創業以来のすべてをここからの出発点としている。商品の品数3万点以上という現在の多様な製品ラインアップを考えると、やはり製品の品質管理を徹底させ、すべてを見える化で総合的に管理していくことが重要なことである。
現在、スガツネ工業の品質管理の主軸は品質保証部がその役割を担っている。3万点以上もある多彩な製品群を一手に引き受けて、製品の品揃えはもとより製品1点1点の品質の維持、確保、促進、管理にこだわり、品質管理体制を確立している。多くのお客様から、「とにかくスガツネはすごい、見習うべきことが多くある」とよく言われるが、その体制、陣形は「こだわりのある製品を広くお客様に届ける関所だ」と称賛を浴びている。こだわりのあるLAMPなどのブランド品をはじめ国内購入品、さらにスガツネ工業が扱う世界中の輸入品のすべてはこの部門がGOサインを出さないと御法度ということである。

現在、その長に立つのがこの分野の川鍋氏である。自ら現場の最前線に立って品質管理の重要性を説き実践しているが、スガツネ工業の品質管理の哲学といったことに徹底的にこだわっている。まさにスガツネ工業の鉄壁の守護人という勢いであるが、そのあふれる思いを最初に紹介させていただこう。
「品質管理こそスガツネ工業のすべての出発点であり、行動の原点です。そのため、とにもかくにもお客様の多様な声に耳を傾け、納得感のある製品を届けるよう邁進しています。特に近年はお客様のご要望に応えてどんどん品数が膨れ上がっていますので、品質管理が非常に難しくなり、きめ細かな対応が不可欠になっていますが、それをするのが私どもの使命であり、真骨頂です。製品に支障や欠陥があれば大問題でお客様にも迷惑かけてしまいますし、会社にとっても大きなイメージダウンになります。そのため、問題を未然に防げるように製品ごとの品質基準を明確にして品質管理体制を確立しています。」
●微に入り細に入りの大局観

確かに品質管理のこだわりは徹底している。だがそれによって生産コストなどがアップということになれば本末転倒なので、あくまでもお客様にも納得いただけるような展開を講じている。特に市場トレンドに沿った、あるいはまだ日本では珍しい輸入品は管理が難しく手間がかかるのだが、これも盤石の体制を確立している。仮に品質に支障があると距離の問題や言葉の問題から対応にずいぶん骨が折れるのだが、安定供給という観点から受け入れ検査体制を軌道に乗せている。 輸入品や国内購入品は、問題が発生した時だけではなく、常日頃から取引企業や協力工場の経営や製品事情、製品取り扱いに全神経を使っている。また、定期的に企業や工場訪問など現場の方と直接に情報交換したり、生産ライン見学したりして、あくまでも一体感のある製品提供に撤している。ともすればスガツネ工業は商社的機能が多いと見られがちだが、品質基準は勿論メーカー目線で対応している。例えば、購入先の製品価値はもとより、経営や方向性にスガツネ工業と違いがあるかなどを比較、分析などを行っているのだ。

そこにあるのは、無論あら捜しといったことではなく、あくまでも良いもの、納得できるものをお互いに追求していこう、提供していこうという大局感である。また必要に応じて日本市場に合わせ、メーカーとは別に日本語のカタログ、取付説明書、動画などを独自で用意したりと余念がない。
●品質管理こそ企業の品格を創る。
ではここで、スガツネ工業のこだわりの総本山本ともいうべき品質保証のこだわりについてもう少し紹介しておこう。先の川鍋氏はその狙いについて次のように語っている。
「トラブルが起こってから、ではなく未然に防ぐために先手、先手の取り扱いに留意しています。具体的には、品質管理の工程表を作成して関連部署や協力工場と緊密なコミュニケーション活動を行っています。例えば日本と海外は電圧が違いますが、生産ラインが海外の場合は日本と電圧の安定度合が異なる場合があるため予め予測し、生産に必要な条件が整っているのか、といった細かい部分まで確認します。微妙な認識のギャップ、確認不足からくるトラブル防止に努めています。」

至れり尽くせり。多様な品質管理を徹底させるためにさまざまな施策を展開しているスガツネ工業は、名前こそ大手企業のそれのように世の中の一般消費者には知られていないものの、住宅やホテル、商業施設などの建築物件や、医療、鉄道、食品機械、半導体や物流などのそれぞれの業界の縁の下の力持ちとして、大役を担っている自負を持ち社員は皆が皆、燃えたぐっている。ボクは、品質とはただ単に製品の良さなのではなく、その製品を世に送り出すために関係した人間の質でもあると考える。人間の質、つまりスガツネで働く一人ひとりが、それぞれ与えられた役割の中で最大限のこだわりとパフォーマンスを出し、スガツネの品質を創っているのだ。
スガツネ工業のこだわりの神髄について、最後に僭越ながらボクのスガツネ工業に対する思い・エールを紹介させてもらい、本コラムの幕を閉じさせていただこう。いや次代への幕開宣言ともいうべきものである。
次代に向かって一致団結、Go and Go!スガツネ工業創業以来の心には1点の曇りも許されません。全社員、関連部門、関連会社が一体となって、また国をあげての品質管理にこだわっている。言葉を変えると、このマインドがお客様とスガツネ工業を一つにつなぐ財産だと思います。品質管理の心こそ、企業永遠のシンボル。いま、新型コロナウイルス問題などで世の中、何かとあわただしいが、この精神こそ、企業の未来にかかっているのではないだろうか。これからもここに力点を置いて、未来を描いていってほしい一心です。まさに、品質こそが企業の品格を創る礎なのだから。
文 : 坂口 利彦 氏